呟き
少し吃音の在るSさんが、電話の向こうで咳き込むようにして
話す
Sさんは
シドニーでの友人の一人
家がご近所だったので、随分仲良くしていただいた
帰国してから
奥方とは行き来があるのだが
旦那さんのほうとは、シドニー空港でバイバイしたきりになっている
オシャレなご夫妻で、お会いするたびさりげなく流行のものを身に着けている
外交官という立場上、はなせないこともあるのは承知してのお付き合いだったが
ギリギリ結構面白い話をしてくれたものだ
電話は10分ほどで切れた
お会いしましょうというコトバには曖昧な返事しか出来ない
100パーセントが億劫な気持ちだけで、彼等をキライになったわけではない
でも
ノーなのだ
誰とも会いたくない
ご縁があれば
又、会いましょうネ
電話を切ってから
そっと呟いた