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父と二人


父と二人

家族と別れ、父と2人きりでアパートに住んだ。
わたし、13の春。
学校が終わると、明日まで、ほとんどが一人。
いつ、帰るか分からない父の帰りをただ、ひたすらに待つ。
夜9時ごろがピークで、 一番一人を実感する時だ。
いろいろな家庭からもれる
さまざまな声、ざわめき、におい。
わたし、その、一軒一軒を訪ねては、楽しい輪の中に入っていく。
、、、、、、そんな、夢を見る。
夢の中では、隣人はとてもやさしくて、その上に自然体。
アレコレと尋ねて困らせたり、勿論、田舎の方言を笑ったりもしない。
じーっとして居るだけの時間。
空想の中、ゆめの種がつきるまで、それはつづく。
そんな

弱弱しい、

夢の見方はその時に覚えたのだろうか?
今思うとまるで、マッチうりの少女だなあ。(マッチのないね。)
でも、、マッチ売りの少女と決定的に違うのは、

今、生きていることだ。
生きてこられたのは、それは、
父がいたから。
父と二人励んだのは、、(貯金)
一生懸命。ひたすらに。滑稽に。
目的は聞いていなかったけど、真剣な
目的だった。
父にとって、もしかして、
娘をまきこんでの敗者復活戦だったのかなあ。
わたしがその時、父のたった一人の仲間であり、相棒だったことは確実だ。
そしてそれが
わたしにとっては、このうえない名誉だった事も。
世間へ暗黙の秘密を持つことが、すばらしく、たのしかった。
貯金は、押入れの中の板の上。
10円100円のパラダイス。
10個ずつまとめて
ずらっとならんだそのさまは
何年たっても忘れられない。
一杯になると銀行のノートに
記入されるのだ。
倹約をして貯金することに、幼かったわたしは、悲壮感を感じない。
ただ、
ゲームに夢中になった。
時々
押入れの中を二人で覗いた。
生き生きとして、わくわくとして。
その時だけは、
父は少年になっていたのだろう。
まちがいなく。
そんな父は
わたしの友だった。
この世でたった
一人の。
真の友に言葉は、いらない。
解釈も弁解も喜びを表現しあうことさえも。

わかっていた。
13のわたしには。
by artartart100 | 2007-03-06 11:28
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